必見!美しい春の野花たちpart2(平成31年4月5日)
4月2日、3日と雪が降ったことがうそのように、4日(木)からは、穏やかな日差しのもと、色鮮やかな春の妖精たちが美しい姿を見せてくれます。
現在、最もピークを迎えている植物がミチノクフクジュソウ(県域絶滅危惧Ⅰ類)です。鮮やかな黄色に輝く花が、本館前学習広場の横の斜面全体を覆い、まるで魔法でもかけられたような美しさです。
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このミチノクフクジュソウは、生息域外保全のため、29年前に唯一の自生地である勝山市小原地区から十数株を移植したものです。平成の時代とともに、少しずつ分布を広げてきました。令和の時代も和かな(やわらかな)春を演出してほしいと思います。
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そのミチノクフクジュソウが見える歩道横には、カタクリの花も見ごろを迎えています。薄紫色の花を、茎の先端に一つ下向きに咲かせる妖艶なカタクリの姿は、ミチノクフクジュソウの黄色い花とはまた違った印象を受けます。
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これら2つの野の花はとても近くに群落を作っていますので、センターにご来館の際は、本館前学習広場横にお立ち寄りください。
春を謳歌しているのはこうした美しい花々や花に訪れる虫たちだけではありません。今回はこうした鮮やかな花々だけでなく、森の中でひっそりと咲く目立たない植物にもスポットライトを当てたいと思います。
観察の森の中をぶらぶらと歩いていると、枝先からぶらぶらとぶら下がったものが目につきます。実はこれらもれっきとした植物の花です。下の写真はツノハシバミ(カバノキ科ハシバミ属)の花です。
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長く垂れ下がった黄色っぽいものは雄花の集まり(雄花序)です。
ひとつひとつの花を拡大して見てみると、花びらはなく、花粉を蓄えた葯がびっしりついているだけで、ひたすら花粉を作って飛ばす装置のようです。
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一方、雌花の集まりは、こちらのイソギンチャクのような赤いものです。柱頭だけが露出し、やはり花びらはありません。
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ツノハシバミは雄花も雌花も、花なのにまったく華がありません。そして蜜もいい香りもありませんので、虫には見向きもされません。虫に媚びることなく、風に任せてたくさんの花粉を飛ばすことで実を結ぶのです。
ヨーロッパのセイヨウハシバミは美味しいヘーゼルナッツとして知られますが、ツノハシバミの地味な雌花も秋にはおいしい“和製ヘーゼルナッツ”になります。今年は例年に比べかなり多くの花が咲いていますので、秋にはたくさんの実が見られるかもしれません。
他にも、春の森ではミヤマカワラハンノキなど、ぶらぶら雄花をぶら下げた低木を見つけることができます。
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冬に葉を落とす落葉広葉樹の森では、風が運ぶ植物にとっては、まだ木々の葉が開いていない風通しの良い早春の今こそが遠く花粉を飛ばすことのできるチャンスなのです。
綺麗な花だけでなく、時には地味な花を観察すると、植物たちの生きざまが見えてきます。