キキョウの花は三回開く!?(平成27年8月6日)
現在、自然保護センターの自然観察の森に自生と考えられるキキョウが10株ほど花を付けています。
今回は今が見ごろのキキョウの花の生態について紹介します。
この写真では2輪の花が咲いていますが、成熟しているのは右の花だけです。さて、左と右の花で何が違うでしょうか?
よく見ると右の花は雄しべが開きハナバチが訪れていますが、左の花は雄しべが真ん中にある雌しべにぴたっとくっつきまだ花粉を出していません。
では次の写真ではどうでしょうか?
この写真でもやはり2輪の花が咲いていますが、左下の花は未熟で成熟しているのは右の花だけです。
けれど成熟している花も写真1枚目の成熟した花とは様子が違います。
こちらは同じ段階の花の写真をアップしたものです。よく見てみると、雄しべは干からびていますが、真ん中の雌しべが5つに裂けています。
このようにキキョウの花は、
①花びらが開く…未熟な状態
②雄しべが開く…送粉できる状態
③雌しべが開く…受粉できる状態
という3段階の開花を行うのです。この仕組みを雄性先熟と言います。
しかも、同じ株の中に②と③の段階の花が同時に存在しないように開花のタイミングをずらし、自家受粉を避けているのです。
このシステムにより、ほかの株と交配し多様な遺伝子を残すことができるのです。
そしてこちらが散った花です。無事受粉していれば、この後どんどん膨らんでいくことでしょう。
センターのキキョウはまだたくさんのつぼみがついているので、しばらくは花が楽しめそうです。
ぜひ来館の際はキキョウの花をご覧ください。詳しい場所はセンター職員にお尋ねください。
ところでキキョウと言えば、その名前を聞くとすぐ花の姿が浮かぶ日本人には身近な植物のひとつではないでしょうか。
ですが意外なことに今絶滅が心配されています(環境省レッドデータリスト絶滅危惧Ⅱ類)。確かに庭先では見かけても、自然に生えているものを見かけることはめったにありません。
明るい環境を好むキキョウは、田畑の畦やカヤ場など、人手が適度に加わることで維持される里地里山の草原(半自然草原)で生活する植物です。
我々の生活様式の変化に伴い半自然草原が減ったことに加え、乱獲が減少の要因であるとされています。
キキョウのような里山の絶滅危惧種についても今後この場で少しずつ紹介していこうと思います。
文責:国永