まぶしい新緑に隠された森のしくみ(2016.4.28)
森の木々が徐々に葉を開きはじめ、新緑がまぶしい季節になってきました!
森の中を山菜を採って歩いていると、植物は種類によって葉を開いているものもあればそうでないものもあることに気が付きます。
花の時期に順番があるように、葉っぱが開く時期にも順番があるようです。
いったいどんなルールがあるのか見ていきましょう。
こちらの写真は新緑の森を外から写したものです。
よく見てみると、背の低いオオバクロモジなどの低木は既に葉を広げていますが、背の高いコナラやホオノキなど林冠木は、まだほとんど芽吹いていません。
低木の多くは、林冠木が光をさえぎってしまう前に光を得ようと早く葉を開くのです。
森の中に入ってみてみるともっとよくわかります。
ぜひFacebookで公開中の360度カメラで撮影した映像をご覧ください。
さらによく観察してみると、同じ種類の樹木でもライフステージ(生活史段階)によって葉を開くタイミングが異なることがわかります。
イタヤカエデを例に観察してみましょう。
まずは芽生えから
春の光をめいっぱい受けようとしっかり葉を広げています。
一方、背の高い親木のこずえを見てみると・・・
まだ葉はほとんど開いていません。
こずえに見えるものは葉ではなく花です。花にはおびただしい数のハナアブやハナバチ、ハエなどが集まってきていました。
イタヤカエデをはじめ、葉を開く前に花を咲かせる樹木はたくさんありますが、こうした生態は、たくさんの種を実らせる上で大きな意義があるといえます。
葉が茂る前の春の森は見通しや風通しが良いので、虫や風などによって花粉が運ばれやすく、受粉の効率が良くなると考えられるからです。
親木が葉の芽吹きを遅らせてくれることは、芽生えにしてみれば親心の様に受け取れることでしょう。
自然観察の森にはこんな植物もあります。
その名はナニワズ。
今は葉っぱがモサモサですが、なんと夏の訪れを待たずに葉を落としてしまいます。
木陰では、十分な光を得られず、葉を維持するコストがかさむので葉をつけることをあきらめてしまうのです。
なんともいさぎのよい植物ですね。
森の中では植物どうしが光をめぐって常に競争しながら生きていますが、葉を開くタイミングをずらすことで少しでも競争を回避しながら生活しているのです。
葉を開く時期ひとつにしても、多様な植物が共存するための仕組みがあるなんて森は奥深いものですね。
以上、今回はまぶしい新緑に隠された植物たちの必死な暮らしぶりを少しだけ紹介させて頂きました。